積極的な買収戦略を進めるアイデラ~CEO ランディ・ジェイコプスが語る開発ツールビジネス戦略
2018年12月6日、東京・秋葉原のUDX GALLERYにて開発者のための技術イベント「第36回 エンバカデロ・デベロッパーキャンプ」が開催された。今回は、エンバカデロの親会社に相当し、開発ツールビジネスのほか、データベースツールやテストツールビジネスを展開するアイデラのCEOランディ・ジェイコプスが来日した。
積極的な買収戦略により企業規模を拡大
午後最初のセッションに登壇したジェイコプス氏は、ここ数年、新製品のリリースと積極的な買収戦略により製品ラインナップを拡充させ、企業規模を拡大してきたと語る。ベストクラスの開発支援ソフトウェアの提供により、お客様の生産性を高めることをゴールとしているが、その特長は、オープンプラットフォーム戦略で、特定の技術に限定することなく、多様な技術の利点を活かすことのできる柔軟性を提供することだと言う。
アイデラは、ユニークな考え方でビジネスに取り組んでいる。多くの企業はリスクを回避しようとするが、アイデラでは、リスクを取りに行くという考え方を持っている。将来に対してさまざまな不安があることは事実だが、将来に対し積極的に取り組み、そのリスクが何なのか早い段階で理解することが大事だと考えている。
「私たちは、未来に対して全力疾走というアプローチをとります。未来に待ち構えている不安材料を早く見て、それに取り組もうじゃないか!」
ソフトウェア業界におけるトレンドの変化は激しいが、その中でさまざまな取り組みを進めている理由はそこにあったのだ。
また、ビジネスモデルもユニークな方式を導入し、例えばテストツールのTestRailでは、セールス要員ゼロで1万人のユーザーを獲得している。効率性やコストカットを追求しつつ、よりよい製品を生み出していくことで、ビジネスを成長させていきたいと考えている。
注目の2社Assenbla、Kiuwanとテスト自動化ツールRanorex
こうした考え方に基づき、2018年もさまざまな成果を上げてきた。過去18カ月では、8つの買収を実現し、今年度末までにはさらに2社が加わる予定だ。その中で直近の買収で注目すべきなのは、AssemblaとKiuwanである。
Assemblaは、クラウドベースのソースコード管理、バージョン管理プラットフォームだ。これは、現在市場に提供されているものでも最大規模のものであり、Subversion、Git、Perforceといった主要なVCSをこのプラットフォームで利用できる。こうしたバージョン管理の機能をクラウドベースで必要とする企業、組織にとって最適な選択肢となる。
Kiuwanは、エンドツーエンドのアプリケーションセキュリティプラットフォームだ。25ものプログラミング言語に対応しており、コードに含まれるセキュリティ上のリスクなどを、低コストで利用できるコードスキャンによって検出できる。
これらのツールは、効率的なソフトウェア構築にも大いに役立つはずだ。今後、データベースツール、開発ツール、テストツールといったビジネスユニットの垣根を越えて、相互にメリットを提供できるような製品展開を進めていく。
Ranorexはそのひとつの例で、テストの自動化を可能にするこのツールにおいて、新たにDelphiアプリケーションのUIテスト自動化をサポートした。Ranorexは、日本においてはテクマトリックス株式会社が販売、サポートしている実績あるツールだ。こうしたツールをDelphi開発者も利用できるようになり、テスト効率を劇的に改善できることは大いに喜ばしいことだ。
セッションでは、ジェイコプス氏の講演に続き、ゲストスピーカーとして迎えられたテクマトリックス株式会社の福永一寛氏がRanorexの概要を紹介した。
皆さんの成功こそがゴール
日本法人代表 藤井 等によるRAD Studio新バージョンの概要説明に続き、ジェイコプス氏は、「皆さんの成功こそが私たちの成功を支えるものである」と締めくくった。
ツールは、あくまでも皆さんのビジネスを助けるだけの存在だ。効率性を高めることはできても、それを使ってソフトウェアを作る開発者がいなければ、成功はもたらされない。皆さんの支援があってこそのツールベンダーであることを強調して、講演を終了した。