日立メディカルコンピュータ株式会社
アプリケーション
患者向けプレゼンテーション画像ビューアソフト「DELTA View」
開発ツール
- Delphi
課題
- 治療経過を時間軸で表示・操作する画期的なユーザーインターフェイスの実装
- デザイン関連のコスト削減
- Windows版に加えて、iPadでの利用へ対応
結果
- FireMonkeyコンポーネントの高い表現力によるユーザーインターフェイスの実装
- FireMonkeyスタイルブックによりデザイナーレスのプロジェクトを実現
- Delphi XE4のマルチデバイス開発機能により、WindowsとiPad双方を単一のコードベースで開発
歯医者でレントゲン写真を見る場合、最近はモニターで見ることがほとんどだが、この画像ビューアの使い勝手を画期的に向上させたのが、日立メディカルコンピュータが開発したDELTA Viewだ。
Delphi XE4のベータ版の評価から開始し、既存のWindows版のコードを共有することで、わずか1ヶ月でiPad上で動く状態まで進めることができました。
日立メディカルコンピュータ株式会社 高柳 信哉 氏
開発を担当した日立メディカルコンピュータ株式会社の高柳信哉氏は、「DELTA Viewの開発コンセプトは、直感的な操作とマニュアルレスです。このコンセプトを実現できるのは、DelphiとFireMonkeyの組み合わせしかなかった」と語る。
歯科医療行為の大半はチェアサイドで行われる。チェアサイドは狭く、マウスを操作する場所がほとんどない。このため、最少の動作で操作を完結させる必要がある。DELTA Viewは、直感的な操作で患者の各シーンで必要な情報を素早く呼び出し、患者に適切なプレゼンテーションを行うことができる。「1人の患者のタイムラインに、パノラマ、デンタル、口腔内写真をすべて並べるユーザーインターフェイスを実装できました。 数日使っただけでFireMonkeyなら実現できると実感しました」(高柳氏)
レントゲン、スキャナー、カメラで撮影した医用画像フォーマットのDICOM(ビットマップ系のRAWフォーマット)は高解像度、かつ、メタデータを内包しているので、既成のアプリケーションの動作が遅い。DELTA Viewは、DICOMから2種類のJPEG画像(サムネイル用と閲覧用)を作成して、これらを高速に呼び出す。デモンストレーションを見た歯科医からは「あきれるほどの速さ」と高評価を得た。これらの多様な画像表示は、Delphiのビジュアルコンポーネントとして標準に搭載されているイメージコンポーネントで容易に実装できた。
また、従来の歯科医療アプリケーションは、青いウインドウ、白の背景、黒い文字のWindows風ルックスが多いが、DELTA Viewは、黒を基調にしたシックでスマートなデザインを採用した。このルックスは「スタイリッシュだ」と歯科医に好評だ。さらに、同社は最少の動作で操作を完結させるため、DELTA Viewに、タブレットやスマートフォンのような、フリック風の操作も実装した。これは、Windows版に加えて、iPad版のリリースも見据えてのことだ。
これらのユーザーインターフェイスの実装には、マルチデバイス対応のアプリケーションフレームワークFireMonkeyを最大限活用した。FireMonkeyなら、デバイスの差をフレームワークが吸収し、Windows版とiPad版で共通のコードを利用することができる。
開発本部 歯科開発部 開発課 主任
高柳 信哉氏
開発本部 歯科開発部 部長
有住 紀昭氏
アプリケーション全体のデザインには、FireMonkeyのスタイルブックを用いた。同社では、これまでアプリケーションの画面とボタンのデザインを外部のデザイナーに依頼していた。しかし、DELTA Viewでは、これらのデザインをデザイナーに依頼しなかった。FireMonkeyを活用することで、デザイン費用のコスト削減も実現できたのだ。
「スタイルブックに今時のデザインが豊 富に用意されているので、 これだけで画面 やボタンのデザイン工程が済んでしまい ます」 (高柳氏)
Delphiを採用した効果は、ユーザーインターフェイスの高性能化だけでなく、コンポーネントによるビジュアル開発がもたらす劇的な生産性向上にも表れた。「画像ビューア部分の実装期間は見込みの1/3で済みました。およそ一月です。この時期は、2年に一度の診療報酬改定への対応もあり、通常のプロジェクトよりタイトな状況でした」と同社の歯科開発部 部長の有住紀昭氏は振り返る。
ビジネスライフサイクルの短期化と競合企業より優位性のあるサービスを早期に提供するために、アプリケーションの開発期間は短縮される傾向にある。マルチデバイス対応のコンポーネントフレームワークを備えるDelphiは、そんなアプリケーション開発現場を支える。
高柳氏が描いた手描きのアプリケーションイメージ。これをFireMonkeyを使い効率的にマルチデバイス対応アプリケーションとして実装できた
Delta ViewのWindows版は、発売後わずか半年間で400以上の歯科医院に採用された。タブレットで使いたいという要望は、歯科医からも多く上がっており、iOSに対応したDelphi XE4のリリースを待って、開発に着手した。
「Delphi XE4のベータ版の評価から開始し、既存のWindows版のコードを共有することで、わずか1ヶ月でiPad上で動く状態まで進めることができました。その後、チューニングや調整を行いアップルの審査をパスし、実開発期間3ヶ月で、iPad版をリリースしたのです」(高柳氏)
iPad 版は、Windows 版と併せて使用することを想定し、同じルック&フィールを採用している。これも、FireMonkey のスタイルブックを活用している。
「歯科開発部では、部門全体でDelphiを全面採用しており、いくつものプロジェクトが、Delphiで進行中です。マルチデバイスに対応したDelphiの高い生産性が、これらの現場で活かされているのです」(有住氏)
「DELTA Viewの開発コンセプトは、直感的な操作とマニュアルレスです。このコンセプトを実現できるのは、DelphiとFireMonkeyの組み合わせしかなかった」
日立メディカルコンピュータ株式会社 高柳 信哉 氏